軟式、硬式の練習球をはじめ、各種練習用やトレーニング用まで、これまでさまざまなボールを開発・販売してきたフィールドフォース。中でも、創業初期のオリジナル商品である「穴あきボール」はいまや、学童野球の多くの現場で、見かけないことがないほど定番の練習ギアとして定着している。さらに最近は、次なる練習用ボールを開発中で…。
練習風景変えた「穴あきボール」

「学童野球の練習風景を変えた」
そういってしまっても、過言ではないだろう。フィールドフォース創業初期のオリジナル商品、「穴あきボール」だ。正式な商品名は「バッティング練習ボール」。蛍光カラーが印象的な、「飛ばない」練習用ボールだ。
空気抵抗が大きいために飛距離が短く、つぶれても、踏んでもすぐに復元するほど、絶妙な柔らかさ。この柔らかさと軽さにより、オートリターンのトスマシンで使えば、室内でも使用可能となっている。
いまや野球練習の定番アイテムともいえるほど普及し、類似品も多く見かけるようになったが、フィールドフォース製の現行モデルには、おなじみのロゴマークが刻印されている。比べてみれば歴然とした柔らかさの違いも感じられるが、マシンで使うときには、フィールドフォース製のボール以外を使用しての故障は保証の対象外となるので、ご注意を──。

練習も試合前も、いたるところで…

河川敷のグラウンドでは、今ではこの穴あきボールを使って練習する学童野球チームを目にしないことがないほどだ。練習だけにとどまらず、最近では試合会場でも、穴あきボールを持ち込み、試合前などに打ち込むチームを多く見かける。
かつては、といっても十年以上も前にはなるが、試合前に外野部分でならと、軟式球を使った打撃練習が認められていたグラウンドも多かったように記憶している。それもいつしか、全面禁止に。外野でもバッティングはダメ、となったのは、いわゆる「飛ぶバット」の普及以降だっただろうか。
そんな場所でも、穴あきボールを使ってのバッティングは認められているケースが珍しくない。練習風景に限らず、あらゆる場面で見かけるようになった穴あきボール。これはもう、「小さな大発明」といえるのではないだろうか。
年明けの大阪で見た風景

学童野球の頂点を競う高円宮賜杯全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメントにおいて、前人未到の8度優勝を果たした“常勝軍団”長曽根ストロングスが地元・大阪府で毎年1月に開催している「目指せ! 全国・スポ少2DAYs」。フィールドフォースは大会スポンサーとして協力しており、社長・吉村尚記も毎年、大会を訪れている(⇒こちら)。今年は吹田市の万博記念公園内で「2DAYs in SUITA」として開催された。
長曽根同様に、全国大会出場、さらにその先の全国制覇を目指す強豪チームが顔をそろえる大会で、吉村は各面で繰り広げられる熱戦を見て回りながら、途中である一角を指さした。
「実は以前から、気になっていたんです」
試合が行われている面以外の空いたスペースでは、試合を待つチーム、試合を終えたチームが思い思いに練習をしている。
「穴あきボール」も多く使われているが、それと同じくらいによく使われているのが、手作りの「軍手ボール」。軍手の指部分を内側に入れて丸め、ボール状にしたものだ。

この軍手ボール、穴あきボールの普及以前から見かけることはあった。当時は選手に数多く打たせるため、軟式球の代替品として使うことが多かった印象で、穴あきボールの普及とともに、見かけることが少なくなっていた。しかし、この大会の会場では現在も、多くのチームが使っている。
軍手ボールを使う理由を指導者たちに尋ねてみると、共通して返ってくる答えは「打感」。穴あきボールは、その軽さが利点でもある一方で、打感はそれほど得られない。そこで軍手ボール。ここでは軟式球の代わりなどではなく、「打感はあるが、あまり飛ばない」ことが長所と捉えられ、まぎれもなく「練習球」として軍手ボールが重宝されていたのだ。
山田西リトルウルフの「軍手ボール」

軍手ボールは手作りなので、その見た目もさまざま。多いのは、ビニールテープでぐるぐると巻いて球体にしたものだ。
「ただ、これはビニールテープが擦り切れてしまって、わりとすぐにボロボロになってしまうんですよね」と吉村。そう、軍手ボールは手作りであるだけに、仕上がり具合によっては劣化も早く、ボロボロの状態で使われているものもよく見かける。
そんな中、随分と整った見た目の軍手ボールを使っているチームがあった。山田西リトルウルフ。昨年のこの大会で優勝した、大阪府の強豪だ。
ボールのひとつを手に取ってみると、軍手ボールであることは確かだが、表面の軍手がしっかりと縫い付けられており、既製品といわれても納得してしまうくらいに、完成度が高い。聞けば、裁縫が得意な棚原徹監督の奥様が手縫いで作られているとのこと。中身は軍手ではなく、廃棄衣類の端切れなどが詰めてあるのだという。
「これはすごいな…」
山田西の軍手ボールを子細に観察し、吉村がつぶやいた。
発見、FF製軍手ボールのプロトタイプ!?
それから半月ほど後のことだ。吉村の手には、軍手ボールに似た「何か」があった。
「これね、中国の『競技用お手玉』なんです」
見せてもらうと、確かに、軍手のように綿糸を編んだくるみで、ビーズ状の中身を包んだ球体。外見は軍手ボールに似ている。軟式J号よりも二回りくらい小さいか。
「この中身を変えて、大きいサイズのものを作れば、軍手ボールが機械で作れることになりますよね」

吉村がお手玉を放り上げながら笑顔を見せる。フィールドフォース製「軍手ボール」の形が見えてきた。
「これで、打ってもあまり飛ばず、柔らかくて危険が少なく、さらに打感もあるボールが作れそうです。穴あきボールの足りなかった部分を補完できる商品になるんじゃないでしょうか」
吉村はさらに続けた。
「そして、このボールでもうひとつ、考えていることがあるんです」
グリーングラブの相棒としても◎
もうひとつ考えていることとは──。
「小さな子どもたちに使ってもらうボールです。素手でも投げて捕れるし、『グリーングラブ』とも相性がいいと思うんです」
グリーングラブはこれから野球を始めようという、小さな子どもたちのために開発された、スターター向けのグラブだ。毎年、クリスマス時期にはプレゼント企画も行われている。吉村はこのグラブについて、考えていたことがあった。
「グリーングラブで使うのに最適なボールが作れないだろうか、と」

グリーングラブの対象年齢は6~7歳。つまり幼稚園児向けだ。その下の年齢、3~5歳児向けの「グリーンマメグラブ」もある。ただ、これらのグラブに適したボールを考えると、軟式球ではJ号球はもちろん、一番小さなD号球でも、まだ大きすぎる。加えて、幼児が使うには硬すぎる。
初めてのキャッチボールで、ボールに対する恐怖心は与えたくない。ただ、柔らかな素材のボールというと、ウレタン製のものか、軟式テニスボールのような中空ゴムボールあたりが考えられるが、どちらも軽いうえに弾力がありすぎる。グラブを使ってキャッチしようとすると、グラブの中でボールが暴れてしまうことになる。
「その点、軍手ボールなら当たっても痛くないし、弾まないから、キャッチボールで使っても、しっかりグラブに収まってくれる。適度な重さもあるので、グラブで捕る気持ち良さも感じられるはず。スターターのためのボールとして、最適だと思いませんか」
こちらも目からうろこ。グラブにぴったりと収まる大きさと重さで作れば、最初のキャッチボール用にバッチリではないか。
練習球としての軍手ボールと、初めてのボールとしての軍手ボール。遠からず、魅力的な商品が二つ、生まれそうな気配なのだ。